はじめに
こんにちは.電気通信大学 岡本研究室修士2年の羽切,修士1年の綾部,上田, 細尾です.今回私たちは,人工知能学会全国大会(JSAI)に参加してきました.本記事ではJSAIの様子や感想についてお伝えします.
JSAI概要
人工知能学会全国大会(JSAI)は日本最大級のAI学術イベントで,2025年で第39回となります.JSAI2025は2025年5月27日から30日までの4日間開催されました.会場は大阪府大阪市北区中之島にあるグランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)です.かなり規模の大きいイベントとなっており,国際セッションが3,一般セッションが11,私たちの発表したオーガナイズドセッションについては47も企画されていました.ポスターセッションでの発表も行いましたが,参加者の多い大会であると感じました.

発表内容について
大規模言語モデルを用いた料理レシピの曖昧表現補完(上田茜)
私は,料理レシピ投稿サイトに存在する曖昧表現を,大規模言語モデルを用いてわかりやすい表現に補完する方法について発表しました.曖昧表現の補完には,料理家が執筆したレシピを参照情報とする,検索拡張生成を活用したシステムを構築しました.有効性を検証する調理実験の結果,可読性の向上を明らかにしました.質疑応答中や発表終了後に,今後のアドバイスやお褒めの言葉も頂けて,修士でも引き継ぎ研究を頑張ろうと思いました.
大規模言語モデルによる商品利用シナリオの生成と評価(羽切まどか)
私は現在,「補完推薦」と呼ばれる推薦システムの研究を行っています.これは,たとえばカメラを購入したユーザーに対してSDカードを推薦する,といった仕組みです.今回の研究では,補完推薦の新たなアイデアとして,「あるアイテム(クエリアイテム)を使用するシナリオと,そのシナリオを実現するために必要なアイテムが補完関係にある」という仮説が正しいかどうかを検証しました.
具体的には,「クエリアイテム(カテゴリ)」のみを大規模言語モデル(LLM)に入力し,それに基づいてアイテムの利用シナリオを生成させる実験を行い,生成結果を人手で評価しました.発表当日は,オンラインで100人以上の方にご参加いただき,会場では立ち見が出るほど多くの方に聴講していただきました.とても緊張しましたが,無事に発表を終えることができ,また多くの貴重なアドバイスをいただき,大変有意義な時間となりました.
柑橘類を対象とした推薦システムの実現に向けた基礎的調査(細尾佳意)
私は,柑橘をテーマにして研究に取り組み,上記タイトルでポスター発表に参加してきました.多くの方にテーマに興味を持っていただき,説明対応の連続でとても充実し,研究理解が加速する時間でした.主に,誰が嬉しい推薦なのかや,個人同士の好みをどう比較しているのかなどの質問をいただき,研究の意義の部分を改めて再認識することができたことに成長を感じました.多くの方が,この嗜好を取り扱う面に興味を持っていただき,様々な発展先の意見やどのように実験や調査を進めていくべきかのコツもいただきました.取り組むべき課題が明らかになりながらも,自分の研究の面白さにさらに気づけ,この感覚を忘れないように今後も取り組んでいきたいです.

深層学習を用いた物件外観画像による築年代推定法の検討(綾部響己)
タイトルの通りですが,私は不動産物件の築年代を外観画像から推定することについて研究しており,その内容を発表してきました.主に頂いたコメントとしては,この研究はどういう意義があるの?であったり,解釈性やデータセットの特徴など,普段のゼミでも指摘されているようなことを質問されてしまいました.こういった部分については発表内でしっかり伝えるべきだったなと反省はありましたが,興味深い,面白いという意見も伺うことができ,大変有意義な時間となりました.
また,「不動産とAI」というセッションでの発表だったため,全ての発表後には今後の不動産関連研究についてのディスカッションの時間も設けられました.ここでは主に不動産データに対する法令や活用について議論が進み,全体を通して,産学官連携して取り組む姿勢を感じました.短い時間でしたが,貴重なお話を伺うことができました.
気になった発表について
(綾部)こちらは,株価予測についてNeural Additive Models(NAM)を用いるというものです.NAMというモデル構造を初めて知ったのですが,全結合層のみのNeural Network Modelに対して特徴量への解釈性を高め,かつ精度を犠牲にしないというモデルで大変興味深かったです.特に,特殊な非線形変換をサブネットワークの結合部に噛ませることで,モデルが安定した挙動を示すということで,今後NAMが研究されていくのでは?という期待感を感じさせる研究でした.
(羽切)この研究では,Vision-Language Model(VLM)がどのような嗜好の偏り(バイアス)を持っているのかを検証したものです.男女それぞれの画像をVLMに与え,「どちらの画像の方がより魅力的ですか?」という質問を投げかけるという実験を行なっていました.その結果,3種類の全てのモデルにおいて女性の画像を「魅力的」と判断する傾向が見られました.しかし,その判断理由を問いかけると「照明やコントラスト」「構図」など性別とは直接関係のない要素を根拠として挙げることが多かったそうです.実験では画像生成を用いて性別以外の条件を全く同じにした画像を与えているので,そうした要因は排除されているはずです.VLMも言い訳をするんだなと感心しました.また,この研究に限った話ではないのですが,バイアスを含むような問いかけを行うとLLMが回答を拒否するケースも多くあるそうです.こうした人間でも難しいバイアスの扱いについて,今後どのように改善されていくのか,非常に興味深く感じました.
(上田)この研究は,LLMを用いた自律エージェントが対話シミュレーションを通じて性格特性を分析するシステムを提案している研究です.性格特性の分析とは,よくある性格診断のようなもので,個人的に最近よく受ける機会があり親和性があったのと,LLMをエージェントとして利用している,という2点で興味を持ち,発表を聴きました.性格特性の分析において,自己評価は信頼性が低いため他者評価を利用したいというモチベーションから,LLMエージェントを他者として扱ったそうです.対話状況の設定から自動評定までをLLMが一貫して行うチャットベースのシステムで,プレゼン中にシステムを実際に動かした際の様子も見ることかできました.自然に会話をするだけで,自分の性格分析をしてくれるのは大変興味深かったです.
(細尾)この研究は,食品の「好み(主観的価値)」が脳でどのように計算されているかを,視覚情報をもとに予測する深層学習モデル(DCNN)を使って明らかにしようとしたものです.200人の食品画像に対する「好き」「美味しそう」「健康そう」のスコアの評価データをもとに,ConvNeXtなどのモデルを用いて学習・予測し,画像のどの特徴(色,健康性,美味しさなど)がどのDCNN層で表現されているかを分析していました.自分としては,食べ物の美味しいをどう評価しているのかを定量的に表すことができるのかと気になり,聴衆として参加しました.単なる画像認識でなく,人間の「嗜好」の計算過程を模倣・可視化しようとした姿勢がユニークだなと感じました.
大阪観光
(細尾)1日目.皆で朝早く出発して飛行機で会場のある大阪に向かいました.到着して落ち着いたのが昼頃だったので,同期と一緒に近くの人気なラーメン屋さんに向かいました!
オフィス街も近いお店だったので長ーい列ができていました.そこで私たちは,あるゲームをしました.その名も「○○○ in the loop ゲーム」です.ルールはシンプルで,あるお題を出して,〇〇に入る単語を当てるゲームです.しかし,出題者は本研究室で皆で読んでいる「Human in the loop 機械学習」を模倣しなければなりません.例えば,「女性のみにアノテーションをお願いする場合は?」に対して,「Women in the loop」が答えになります.面白いですね.
そうこうしている間に,ようやく順番が回ってきました.せっかく遠い地までやってきたということで肉寿司もみんなで食べました!柑橘がうまく活用されていて,高級感がある一杯でした!
お腹も満たしたので,その後現地入りして発表に挑みました.

(上田)2日目の空き時間に,個人的にずっと食べたかった「りくろーおじさんのチーズケーキ」を食べに行きました!りくろーおじさんは,大阪にしかないお店で,焼きたてのふわっふわなチーズケーキが有名です.ホール単位での販売なので,ワンホールをゲットし,近くの公園で4等分して焼きたてを食べました.卵感が非常に強くレーズンのアクセントもあり,食べやすく美味しかったです.これだけ美味しいとカロリーも気になりますが,手で持つのが難しいくらい軽くてふわふわだったので,ゼロカロリーだと思います.一緒に買いに行って食べてくれた3人には感謝の気持ちでいっぱいです.

(綾部)3日目のプログラムが終了してからは,先生と学生で新世界にある串カツを頂きました.様々な種類の串カツが頂けて大変美味しかったです.柑橘ソムリエである細尾くんは「みかん」の串カツも食べていました.美味しいのか気になるところです.摩訶不思議な串カツはお店ならではですね.自分はサーモンの串カツが衝撃的でした.どんな味なんだろうと思って食べてみたら,普通に鮭のフライで,確かにそうだよなと思いました.ご当地のグルメを色々堪能できるのも,泊まりがけの学会参加の醍醐味だと思います.

(羽切)JSAI2025の開催期間中,大阪万博が開催されており,街の至る所にミャクミャク様が顕現しておられました.新世界に串カツを食べに行った際,「ミャクミャク なりきりフェイスパック」というものを見つけ,思わず購入しました.ホテルに戻って試してみたところ,顔面にミャクミャク様が寄生しました.鏡を見るたびに笑えたのでとても良い商品だと思います.観光より食い意地を満たしていたので特筆するような名所にはあまり行っていませんが,大阪名物のかすうどんや551の豚まん,くくるのたこ焼きを食べました.生まれも育ちも関東なので関西の味に新鮮さを感じました.あとエスカレーターに乗る時,ついいつもの癖で左側に乗ってしまい慌てて右側に寄るということを5回はやりました.文化圏の違いって面白いですね.

おわりに
今回のJSAI2025の参加を通して様々な方と研究に関して議論を行い,新しい知見を得ることができました.規模が大きい学会なだけに,様々な分野や技術に触れることができ、大変充実した学会参加となりました.今回の学会参加は,私たち学生にとって今後の研究や学会参加に対する強いモチベーションに繋がる良い経験となりました.引き続き研究活動に励んでまいります.